デリバティブは「派生商品」と訳される場合が多いようですが,具体的には,先物,オプション,スワップなどを含め,かなり広い範囲の「金融派生商品」を指して使われる場合が多く,どこまでをデリバティブに含めるかというコンセンサスはここでは,先物為替予約を用いた異なる通貨間のスワップを説明しましたが,ドルLIBORを介した異なる通貨間(例えば円とドル)の長期固定金利のスワップも広く行われており,このスワップを通常,通貨スワップと呼んでいます。
通貨スワップではドルLiBORを介して円とドルの長期周定金利の支払いをスワップしますが,例えば,元本100億円のスワップを組む場合,現在の為替レート(スポットレート)で,ドルの元本金額を計算し,それぞれの元本金額にそれぞれの支払うべき長期固定金利を掛けて,それぞれのキャッシュフローを確定します。
このキャッシュフローを交換するわけですが,例えば,ドルのキャッシュフローをある為替レートで円に換算したキャッシュフローの現在価値の合計は,円のキャッシュフローの現在価値の合計に等しくなければスワップは成立しません。
したがって,この為替レートがここでの説明に使った先物為替レートに等しくなるというわけです。
いまのところないようです。
したがって,この本では説明の順番の都合上,スワップが本節の前に説明されていますが,実際にはデリバティブという用語は,スワップも含めた広い概念で使われると考えてください。
さあ,それでは先物の説明に入りましょう。
先物という言葉を聞いて何を連想しますか。
一体先物とは何なのでしょうか。
先物というくらいですから,何かが先にあるのかなあという疑問がわきます。
普通先物という場合には,決済,つまり何かを買う,または売る時に,その何かとお金を交換する時が,通常の取引より,かなり先に行われる場合の取引を先物取引といいます。
そして,先物取引で取引される「物」とその「取引」を,通常「先物」と総称します。
もう少しわかりやすく説明しましょう。
日本には,いま個別株式の先物は存在しませんが,説明のために個別株式の先物が取引されているとします。
また,IRRのところで登場した,A食品会社にも登場してもらいます。
東京株式市場では,毎日株の取引が行われており,A食品会社の株式も毎日値段が付いています。
もしあなたが,今日,近くの証券会社に出向いてA食品会社の株式を買うと,決済日は今日も入れて4日後です。
これが株を買う時の通常行われている「現物取引」と呼ばれている取引です。
もし,明日買いに行けば,決済日は明日から4日後で,以降,買う日が1日ずつ伸びるに従って決済日も順々に1日ずつ伸びていきます。
では,先物はどうなるのでしょうか。
通常,先物の場合は,3月,6月,9月,12月のあらかじめ決められた日(通常20日)にまとめて決済されます(なおここでは説明の都合上すべての先物,オプションが月末に決済されるものと仮定しています)。
したがって,現物取引と最も異なる部分は,1月に行われた3月決済の先物取引は,3月の決済日まで,決済しなくても良いということです。
つまり,現物取引であれば,何としてでも4日後には現金を用意して株式を引き取らなければなりませんが,先物取引であれば決済日がくるまで,3ヵ月もしくは6ヵ月はお金を用意しなくても良いわけです。
このような便利な取引ができれば,いろいろなことが可能になってきます。
例えば,相場に自信があれば,今,先物で「買い」の取引を行って,決済日がくる前に予測通り株価が上昇すれば,そこで買ってあった先物を売って利益を確保することも可能になります。
ただ,決済を先に延ばせるといいますが,その先物取引で取引されている「物」は何なのでしょうか。
よく考えれば,「先物」は決済日がくるまで誰も決済を強要できませんので,決済日までは「約束」または「契約」ということになります。
通常「先物」を買った人がいれば売った人もいますので,それぞれ逆の「約束」をした人が決済日まで存在することになり,決済日にそれぞれが義務を果たすことによって,ある特定の先物に関する権利義務関係はすべて消滅します。
したがって,「先物取引」とは,決済日までは「約束」または「契約」で,決済日にその約束に基づいた義務が発生する取引ということができます。
さあ,それでは例を使いながらもう少し詳しく説明してみましょう。
1994年のコメ不足を思い出してください。
93年が冷夏でコメの収穫が少なかったことから93年の暮れ頃から,国産米の値段が徐々に上がりはじめ,ついには春過ぎ頃からおコメ屋さんの店頭から国産米が消えてしまうというものでした。
我々,マーケットに長く携わっている者にとっては,ある意味では当たり前のことが起こったような気がしますが,皆さんどうも動きが遅かったような気がします。
例えば,1993年の夏の終わり頃には,1993年の収穫は92年の収穫を大きく下回りそうだということは大体わかっていたはずです。
したがって,本来であれば,1993年の収穫を待たずして何らかの行動を起こす人がいてもおかしくなかったはずですが,10月頃から徐々に動きはじめ,実際に大きく動いたのは年が明けてからだったような気がします。
日本の農家が,先物を使って自分の生産する穀物の売却価格を,最大化しようとしたという話は聞いたことがありませんが,アメリカの麦やトウモロコシ生産者は,かなりの頻度で麦やトウモロコシの先物取引を利用して,自分の生産する穀物の売却価格を最大化し,結果的に利益を最大化しようとしていると聞きます。
では,実際に彼らがどのようにして先物取引を利用しているのか,日本のコメの例を使いながら見てみましょう。
今仮に,1993年の8月の終わりに,9月まで決済を待てるコメの取引Oメの先物取引)ができていたとすればどういうことが可能だったのでしょうか。
まず8月の終わりに,9月に決済できるコメの「買い」の取引をしたとします。
8月の終わりですから,まだ誰もコメの値段がそんなに上がるとは思っていません。
この状態を示しだのが表1−2です。
仮に10キログラム,1,000円でこの「買い」の取引ができたとします。
9月末になって,収穫が思わしくないということがわかると,当然コメの値段が上がってきます。
仮に,10キロ,1,500円に上昇したとします。
「先んずれば人を制す」で,すでに8月に10キロ,1,000円で9月決済の「買い」の取引をしてありますので,この取引を実行し1,000円で10キロのコメを買います。
そして,配達されたコメを1,500円で売却すれば,瞬時に500円の利益が得られます。
このように,先物の取引は,通常1ヵ月以上先の決済日の取引(売り,買い)の値段を決めるもので,決済日が先ですから買い方はお金の,売り方は現物の手持ちがなくても売買に参加できるという特徴があります。
いかがですか,おわかりいただけましたでしょうか。
先にアメリカの麦やトウモロコシ生産者の話をしましたが,昔は,日本にも大阪に,コメの先物取引をするところがあり,春先から,その年の収穫を先物で取引していたといいますから,この点では,昔の方が進んでいたのかもしれません。
先物の値段は,実際のコメの値段と密接な関係を保ちながら決まってきますが,同時に実際のコメの値段と,先物の値段は,全く別物だということです。
これは,実際のコメの値段が,原則として,取引を約束した日(約定日)から,すぐに決済をしなければならないのに対し,先物は,約定日から,コメの現物を実際に取引する日(決済日)までが,かなり長いことによります。
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